🚨 行政判断の整理:通院介助における不適切な報酬算定と水増し請求
長崎県は、有限会社厚生ライフ長崎が運営する訪問介護事業所に対し、介護保険法に基づき指定取消処分を決定しました。本件は、利用者の受診中の待機時間を介助時間に含めるなどの時間水増し、および「通院等乗降介助」として算定すべき内容を「身体介護」として請求したことなどにより、約3,090万円を不当に受領したことが認定されたことによる措置です。
対象事業者および事業所の概要
| 対象事業所 | (有)厚生ライフ長崎指定訪問介護事業所 |
|---|---|
| 所在地 | 長崎県長崎市(詳細所在地は告示資料参照) |
| サービスの種類 | 訪問介護 |
| 運営法人 | 有限会社 厚生ライフ長崎 |
| 代表者 | (提供資料に記載なし) |
施設運営データ:行政処分の詳細
| 処分の内容 | 指定の取消し |
|---|---|
| 取消年月日 | 2011年9月30日付(9月6日発表) |
| 不正受領額 | 約3,090万円(身体介護と通院等乗降介助の差額分) |
| 返還命令額 | 計 約4,300万円 (不正受領額に40%の加算金を付加) |
| 主な処分理由 |
1. サービス提供時間の水増し:受診中の待機時間を介助時間に含める、帰着時間を実際より遅く記録する等の行為。 2. 介護報酬の不正請求:本来「通院等乗降介助」で算定すべきサービスを、高単価な「身体介護」として請求した。 3. 虚偽報告:監査において、サービス提供責任者や職員が事実と異なる答弁を行った。 |
処分の背景:通院介助における「身体介護」算定の厳格な要件
訪問介護における通院の介助は、その内容によって「身体介護中心型」と「通院等乗降介助」に区分されます。前者の算定には、外出準備から病院内の移動・受診介助に至るまで、継続的な身体的介助が必要であることが条件となります。
本件では、受診中の単なる待機時間を介助時間として計上していた点、および実態として身体介助の要件を満たさないサービスを「身体介護」として請求していた点が、制度運営上の重大な不備として整理されました。また、監査における虚偽の答弁は、行政との信頼関係を損なう事項と位置づけられ、指定取消という厳しい判断に至る要因となりました。
⚠️ 行政処分が及ぼす実務的影響の整理
通院介助の実務において、最も慎重な判断が求められるのが「身体介護」として算定できるかどうかです。単なる送迎や、診察を待っているだけの時間は、原則として介護報酬の対象(介助時間)には含まれません。ここを曖昧にすることは、制度の趣旨を逸脱するだけでなく、多額の過誤請求を招くリスクとなります。
本件のように、タクシー業務を主とする事業所であっても、介護保険サービスとして提供する以上は、訪問介護の運営基準を厳格に遵守しなければなりません。「サービスは提供していたから」という理由で報酬区分を拡大解釈することは、実務上の安全保障を欠く行為と言えます。
管理者においては、日々のサービス提供記録と報酬算定の整合性を常に検証し、スタッフが正しい算定基準を理解しているかを確認し続けることが、事業を適正に運営する上での重要な役割です。
※用語解説はこちら
⚖️ 法的な背景解説:介護保険法第77条に基づく取消のロジック
1. 指定取消の法的根拠
本件は、介護保険法第77条第1項に基づき、以下の項目に該当すると整理されます。
・第6号(不正請求):サービス提供時間の水増しおよび不適切な報酬区分の適用による給付費の受領。
・第7号(虚偽報告):監査における職員の事実と異なる答弁。
・第10号(不正または著しく不当な行為):組織的な不正運営の実態。
2. 返還金と「40%の加算金」の仕組み
介護保険法第22条第3項に基づき、不正に受領した給付費については、返還だけでなく、その額に100分の40を乗じて得た額を徴収(加算金)できると定められています。これは公費による給付の適正化を図るための強力な金銭的ペナルティです。
3. 通院等乗降介助と身体介護の法的定義
厚生労働省の告示により、通院等乗降介助は「居宅サービスに含まれる一連の行為」として定義されています。病院内での介助が「身体介護」として認められるためには、個別のケアプランに基づき、具体的かつ継続的な身体的ケアが必要であることが不可欠です。
・ほほえみグループ ニュースリリース:(有)厚生ライフ長崎指定訪問介護事業所に対する指定取消処分について

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