🚨 行政判断の整理:介護保険側の不正に連動し、障害福祉サービスも一発退場
大阪市は、株式会社アイリスに対し、介護保険法および障害者総合支援法に基づき指定取消処分を決定しました。介護保険側での22名におよぶ架空請求と記録捏造を重く見て、障害福祉サービス側(居宅介護・重度訪問介護)についても、返還金が発生していないにも関わらず連動して指定を取り消すという極めて厳しい判断を下しました。
対象事業所の概要
| 対象事業所名 | アイリスケア訪問介護ステーション |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市浪速区恵美須西一丁目4番8号 2階 📍 地図を確認 |
| 運営法人 | 株式会社アイリス(代表取締役:鎌田 香世子) |
行政処分データ:返還金と処分の内訳
| 処分の内容 | 全サービス指定取消(令和8年1月1日付) |
|---|---|
| 介護保険側返還金 | 22,750,156円(加算金40%を含む) |
| 生活保護側返還金 | 4,127,032円(加算金40%を含む) |
| 障害福祉側返還金 | 0円(返還金なしでの指定取消) |
| 返還命令合計額 | 計 26,877,188円(概算) |
処分の背景:「返還金ゼロ」でも許されない組織的背信
本件の最大の特徴は、障害福祉サービス側で直接的な不正請求が確認されていないにも関わらず、指定が取り消された点にあります。
- 介護保険側の悪質性: 利用者22名への2年以上にわたる架空請求に加え、監査時に捏造した電子記録を提出するという隠蔽工作が認定された。
- 障害福祉側の「連動処分」: 介護保険側での不正が、法人の運営姿勢そのものの欠格を意味すると判断。一体的に運営されている障害福祉サービスについても「その他法令違反」として、返還金計算を待たず即時の取消しが下された。
- 管理責任の放棄: 管理者が現場の法令遵守を全く把握しておらず、指揮命令系統が完全に破綻していたことが全ての根底にあると整理される。
⚠️ 行政処分が及ぼす実務的影響の整理
今回の事案で最も注目すべきは、障害福祉サービス側の返還金が「ゼロ」である点です。通常、行政は返還金額を確定させるために精査を続けますが、今回はそれを待たずに「介護側の不正だけで一発退場」という判断を下しました。
これは、電子記録を捏造して監査を欺こうとした行為が、行政にとって「お金の問題以前に、この法人は福祉に関わらせるべきではない」と判断させた証拠と言えます。一体的運営をしている場合、一箇所の汚れが全体を腐らせるという、実務上の「連鎖」の怖さを象徴するケースです。
「うちは障害福祉だから大丈夫」という甘い考えは通用しません。組織全体のガバナンスが一つでも崩れれば、真面目に働いている他部門のスタッフの雇用すら守れないという、重い教訓と整理すべきでしょう。
※用語解説はこちら
⚖️ 法的な背景解説:返還請求の時効と行政処分の関係
■ 返還請求には「2年の時効」があります
介護保険における不正請求では、原則として不正に受領した介護給付費の返還と、40%の加算金が課されます(介護保険法第22条第3項)。
ただし、大阪市の発表にもある通り、行政が返還を請求できる権利(返還請求権)は2年で時効消滅します。そのため、本件では令和5年5月〜9月分については、時効により返還請求ができず「経済上の措置は行わない」とされています。
■ 処分と金銭は別枠で扱われます
なお、これはあくまで金銭の返還請求ができなくなるだけであり、不正行為そのものが無かったことになるわけではありません。行政処分(指定取消・効力停止等)や刑事責任とは別枠で扱われます。つまり、金銭的な時効を迎えていても、不正の事実に基づき指定を取り消すことは法的に何ら問題ありません。
■ 生活保護法との連動(第78条)
生活保護法においても第78条第2項により同様の返還と加算金(40%)が規定されていますが、こちらも同様に時効の概念が適用されます。制度を跨いでも「逃げ得」を許さない厳格な運用が行われています。

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