介護用語解説(行政処分・不正編)

はじめに

このページは、介護施設や介護事業所で起きる「行政処分」「不正請求」「虐待」などの難しい用語を、 現場・利用者・家族の視点で噛み砕いて説明するための用語集です。
記事を読みながら分からない言葉があれば、ここに戻って確認してください。

まず結論

行政処分とは、ルール違反をした事業所に対して行政が行う「公式なペナルティ」です。

重い順にざっくり言うと、
指定取消 > 全部効力停止 > 一部効力停止 > 改善命令・指導
となることが多いです(※制度や自治体で表現が違う場合あり)。

不正請求・人員基準違反・虐待は、最終的に「利用者の安全」と「税金・保険料(介護保険財源)」の問題に直結します。

この用語集の読み方(コツ)
・まず「まず結論」1行を読んで全体像を掴む
・次に「何が起きる?」「よくある不正」を見る(現場でイメージしやすい)
・分からない用語は、記事からこのページへ戻って確認する

行政処分の種類

行政処分(ぎょうせいしょぶん)

まず結論:法律にもとづいて行政が出す“正式な処分”です。ニュースで「処分」「行政処分」と出たら、基本的にこの意味で使われます。

施設・事業所に起きること
・指定取消や効力停止になると、そのサービスを介護保険で提供できなくなる
・返還金(不正請求)や加算金で資金繰りが悪化しやすい
・求人応募が激減し、人が集まらない(採用面で致命傷)
職員に起きること
・事業所の縮小・閉鎖で配置転換や退職が発生しやすい
・現場の混乱が増え、残った職員に負担が集中することがある
利用者・家族に起きること
・サービスが止まり、転居・転所・事業所変更が必要になる
・情報が少ないと、受け皿探しが大変

指定取消(していとりけし)

まず結論:介護保険サービスを提供するための「指定」を取り消される処分。そのサービスは“営業できない状態”になります。


・デイサービスの指定取消 → そのデイは介護保険で営業できない
・訪問介護の指定取消 → その訪問介護は介護保険で営業できない
ポイント
指定取消は「一番重い」部類。実質的に“退場”です。

指定の全部効力停止(ぜんぶこうりょくていし)

まず結論:一定期間、その事業所の指定の効力を“全部止める”処分です。指定取消ほど永久ではないけど、期間中は介護保険サービスを提供できません。

何が起きる?
・新規受入も、既存サービス提供も基本的に止まる(自治体判断が絡む場合あり)
・売上が止まり、職員の雇用維持が難しくなることがある

指定の一部効力停止(いちぶこうりょくていし)

まず結論:指定の効力を一部だけ止める処分。典型例は「新規利用者の受入停止」や、特定の加算の算定停止などです。

何が起きる?
・既存利用者は継続できる場合がある
・ただし評判悪化・行政監視強化は避けられない

改善命令(かいぜんめいれい)

まず結論:「このままだと危ないので、期限までに直しなさい」という行政の命令。虐待や管理体制の不備などで出ることがあります。

何が起きる?
・期限内に体制整備・再発防止策・報告書提出が求められる
・改善できない場合、より重い処分へ進むことがある

不正請求まわり

不正請求(ふせいせいきゅう)

まず結論:実際には提供していないサービスを提供したことにして、介護報酬を請求すること。要するに“介護保険の不正受給”です。

よくあるパターン
・サービス提供していないのに請求(架空請求)
・回数や時間を水増しして請求(水増し請求)
・条件を満たしていない加算を取る(加算の不正)
施設・事業所に起きること
・返還命令(不正に受け取った分を返せ)
・加算金(ペナルティ上乗せ)
・監査→処分→資金難→閉鎖、の流れになりやすい
職員に起きること
・「現場がやった」ではなく、経営・管理の責任として処分が進むことが多い
・ただし、記録の改ざん等に関与していると、個人の責任問題になりうる
利用者・家族に起きること
・突然のサービス終了・引き継ぎ不足で混乱しやすい
・不正の影響で、必要なケアが適切に提供されていない可能性もある

同一建物減算(どういつたてものげんさん)

まず結論:同じ建物内や隣接する建物の複数利用者へ訪問介護等を提供した場合、 介護報酬が一定割合で減額される仕組みです。

これは、移動時間や人件費などのコストが通常の訪問より少なく済むことを前提に、 過剰な報酬請求を防ぐ目的で制度上設けられています。

なぜ減算されるのか
・同じ建物内なら移動時間がほぼ不要
・短時間で複数人にサービス提供できる
・通常の在宅訪問より事業者側の負担が軽い
よくある不正パターン
・同一建物なのに減算を適用せず満額請求する
・住所を分けて別建物のように装う
・サービス提供場所を虚偽記載する

これらは不正請求として行政処分の対象となり、 悪質な場合は指定取消に至るケースもあります。

※実際に全国で、同一建物減算の未適用を理由とした指定取消・効力停止処分が複数発生しています。

返還(へんかん)・加算金(かさんきん)

まず結論:不正で受け取った分は返し、さらにペナルティとして上乗せ金が課されることがあります。

意味
返還:不正に受け取った介護報酬を返すこと
加算金:不正のペナルティとして上乗せされるお金(自治体により表現や割合が異なる)

虚偽報告(きょぎほうこく)

まず結論:行政の調査に対して嘘の報告をすること。不正請求とセットで出てくることが多く、悪質性が上がりやすいです。

人員基準・運営基準

処遇改善加算(しょぐうかいぜんかさん)

まず結論:介護職員の賃金改善(給与・手当など)に使うために、事業所が受け取れる“上乗せ報酬”です。

何のための制度?
・介護職の賃金水準を上げ、人材確保につなげる
・事業所が「賃金改善した分」を説明できるようにする
事業所に求められること(ざっくり)
・賃金改善の計画を作る(どう配分するか)
・実際に支払ったことを記録・証明する(台帳・賃金資料など)
・ルール通りに算定・報告する
よくある不正・トラブル
・勤務実態のない職員を作り、賃金改善したように見せる
・本当は配っていないのに、配ったことにして請求する
・必要な書類や根拠がなく、後から説明できない

※処遇改善加算は「現場に還元するための公費」なので、ここを偽装すると悪質性が高く扱われやすいです。

運営基準減算(うんえいきじゅんげんさん)

まず結論:運営ルール(記録・会議・説明・体制など)を守れていない場合に、介護報酬が一定割合で減らされる仕組みです。

なぜ減算がある?
・最低限守るべき運営の質を担保するため
・「ルールを守っている事業所」との不公平を防ぐため
よく問題になる場面
・必要な説明や同意が不十分(契約・重要事項説明など)
・会議・研修・記録が形式だけ/残っていない
・体制不備のまま運営しているのに“満額請求”してしまう
不正請求になりやすいポイント
「本来は減算すべきなのに、減算せず満額で請求」すると、不正請求として処分対象になることがあります。

人員配置基準(じんいんはいちきじゅん)

まず結論:サービスの種類ごとに、「必要な職種・人数・配置のしかた」が決められているルールです。

なぜ重要?
・必要な人数・専門職がいないと、事故や虐待、ケア品質低下が起きやすい
・行政からは「安全の土台が崩れている」と見なされやすい
よくある違反パターン
・必要な資格者が配置されていない(名義貸し・不在など)
・勤務実態のない職員を“いることにする”(勤務表・記録の偽装)
・配置基準を満たさないのに、満たしている前提で請求する
何が起きやすい?
・監査が入ると、勤務表・雇用契約・賃金台帳・記録の整合性まで見られる
・悪質なら指定取消や効力停止に進むことがある

人員基準違反(じんいんきじゅんいはん)

まず結論:法律や基準で必要とされる職員(資格者・配置人数)を満たしていない状態です。

何が怖い?
・必要な専門職がいないと、ケアの質が落ちやすい
・事故・虐待・記録不備が起きやすくなる
・行政から見ると「根本が崩れている」ので重く扱われやすい

運営基準違反(うんえいきじゅんいはん)

まず結論:記録・説明・契約・会議・研修・事故報告など、運営ルールの違反です。単体では軽く見えることもありますが、不正請求や虐待とセットになると一気に重くなります。

虐待・事故

虐待(ぎゃくたい)

まず結論:身体的暴力だけでなく、放置(介護放棄)・暴言・不適切ケアなども含まれます。虐待認定が入ると、行政の対応は一気に厳しくなります。

利用者・家族に起きること
・一時避難・転所調整など「生活の継続」が壊れる
・施設への信頼が崩れ、家族の精神的負担が大きい
施設・職員に起きること
・行政監視・改善命令・場合によっては処分
・職員の離職が進みやすい(体制が崩れやすい)

身体拘束(しんたいこうそく)

まず結論:転倒防止などを理由に、ベルト等で自由を奪う行為。例外的に認められる条件がありますが、基本は厳格に制限されます。

運営指導と監査の流れ

運営指導(うんえいしどう)

まず結論:行政が、運営状況を確認して改善を促す手続き。比較的「改善前提」で進みます。

監査(かんさ)

まず結論:不正や重大違反の疑いが強い場合に実施され、処分につながりやすい手続きです。

よくある質問(FAQ)

Q. 指定取消になったら、利用者はすぐ困る?

ケースによりますが、サービス継続が難しくなることが多く、移行支援・代替サービスの調整が必要になります。

Q. 施設(特養など)は指定取消になりにくい?

施設系は利用者の生活があるため、行政が段階的措置(改善命令・効力停止など)を選ぶことがあります。 ただし、悪質性が高い場合は取消があり得ます。

Q. 職員は処分される?

行政処分は基本的に「事業所(法人)」に対して行われます。
ただし、刑事事件(詐欺・暴行など)に発展する場合は個人責任が問われることがあります。

最後に

このサイトでは、行政発表・報道などの公開情報をもとに、介護事業所の不正や行政処分を「探しやすい形」に整備しています。
不明な用語があれば、このページをブックマークして使ってください。

補足
・記事の文中リンクから、この用語集に戻って確認する運用がおすすめです
・「減算」「加算」「人員基準」は処分理由に直結しやすいので、迷ったらまずここを確認してください
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